小学校英語活動のポイント 第8回
カテゴリー:寛治先生走る|2012年1月20日 10:32
コミュニケーション力(資質・能力)の育み方と見取り方のポイント(その3)
前回は、英語による国際的なPerson-to-Person Communication(以下、P-P-C)で求められる資質・能力の素地とその育み方ならびに見取り方のポイントについて、例をあげながら考察した。そこでは、基本的には談話スキル(考え・思い・気持ち・意志・意図などのコミュニケーション能力)をベースにコミュニケーションを図ることが、学習指導要領で重視している「積極的な態度(資質)」の育みにつながることを論述した。そして、積極性を育むためには児童の考え等を発信する場面を設定することと、その資質を見取る際は、児童が考え等の能力を有しているかどうかがポイントになることを解説した。
今回は、その能力(談話スキル)をベースに「方略的能力(スキル)」も英語によるコミュニケーションでは重要な素地・基礎である故、取り上げることとする(コミュニケーション能力の分類については、本連載第五回(八号分)の表「4つのコミュニケーション能力」を参照)。
方略的能力(Strategic competence)とは、相手のことを思いやりながらコミュニケーションを「豊かに持続する力」のことである。具体的には、「相手とのコミュニケーションを続けるために、相手の発言内容を確認したり、明確にするために聞き返したり、念を押したり、例をあげて言い換えたりして相手とのコミュニケーションを円滑に図る言語行為のこと」を意味する。英語圏のコミュニケーションでは頻繁に見られる行為である。
例えば、ショッピングにおいて、しばしば店員と客は品物を確認しながらコミュニケーションを図る。次の対話例を参考に方略的能力(スキル)について解説しよう。
【例】
A(店員): Hello! B(日本人客): Hello!
A: May I help you? B: Yes. キューイ。
A: What? B: アイ・ウォント・キューイ。キューイ・プリーズ。
A: Person? B: キーウィー、プリーズ。
A: Oh, kiwis?↑ B: Yes, kiwi.
A: OK! How many? B: ハウメニー?↑
A: (指で示しながら)One?↑Two?↑Three kiwis?↑
B: Oh, サーティーン、プリーズ。
A: Thirty or thirteen? B:(指で示しながら)サーティーン。
A: Oh, thirteen kiwis? ↑ B: Yes, thirteen kiwis.
A: OK!
ここでは、まず、AもBも、すべて談話スキル(考え等)を用いて対話している。次に、対話のうち、下線部は方略的スキルでもある。なぜなら、互いに相手の発言内容を確認するために、聞き返したり、念を押したり、ジェスチャー等も含めて具体的に言い換えたりしてコミュニケーションを円滑に図っている。それ故、ここでは方略的スキルが頻繁に用いられており、その結果、双方のコミュニケーションが豊かに持続しているといえよう。しかも、Bの「プリーズ(please)」という発話は、相手に対して思いやりの気持ちを発信しており、これは国際的コミュニケーションでは重要なソーシャルスキルである。
小学校における外国語活動では、中学校につながるコミュニケーション能力の素地を養うことが究極の目標である。したがって、この例でみるような豊かなコミュニケーション能力(方略的スキル)の素地も育むようにしたい。小学校学習指導要領第4章「外国語活動」の2の内容で「外国語を用いてコミュニケーションを図ることの大切さを知ること」が求められているからである。具体的には、友達どうしやALTとの体験的コミュニケーション活動を行う際に、相手を思いやりながら、互いに相手の発話内容を確認するように指導しておけばよいであろう。このような活動は音声や表現等の慣れ親しみにつながるといえよう。なお、その際の見取りのポイントは、互いに確認し合っているかどうかである。
指導と評価 vol.55 2009年11月号(通巻659号)
(社)日本図書文化協会 日本教育評価研究会発行
小学校英語活動のポイント 第7回
カテゴリー:寛治先生走る|2012年1月11日 10:48
コミュニケーション力(資質・能力)の育み方と見取り方のポイント(その2)
小学校の「外国語活動」の教育内容は、児童が外国語を用いてALT等とのコミュニケーション活動を通して、①「積極的にコミュニケーションを図ることができるようになること」と②「日本と外国の言語や文化について、体験的に理解を深めることができるようになること」である。そして、究極の目標は中学校外国語科で目指すコミュニケーション力(資質・能力)育成の素地を養うことであり、その活動内容名「聞くこと・話すこと」の体験的コミュニケーション活動である。
つまり、小学校における「外国語活動」では、読み書きの言語スキル学習するのではなく、コミュニケーションの原点というべき人と人が直接行うコミュニケーション体験活動を行う。そこで本稿では外国語(英語)による国際的なPerson-to-Person Communication(以下、P-P-C)で求められる資質・能力の素地とその育み方ならびに見取り方のポイントについて論考する。
英語によるP-P-Cでは、①「積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度」が求められる。この資質の素地を育成するためには、「気持ち、思い、考え、意図、意思」などの能力をベースに、児童一人一人の「主体性(アイデンティティ)」を重視した活動内容を構成し、児童が自ら自己開示し自己実現できるような活動の流れと環境づくりに心がけて指導する必要がある。したがって、①の積極性(資質)の見取りからは、児童が自分の考えや意図(コミュニケーション能力)などをベースに、意欲的に(進んで)コミュニケーションを図っているかどうかがポイントとなる。なお、このことは、中学校外国語科が目指すコミュニケーション力の素地の育成につながる。
このような個々の「主体性」重視のコミュニケーション活動は、左脳が発達した高学年に適切な教育であるとともに、国際的なコミュニケーションの場でも求められる重要な教育内容である。それ故、広義には②の異文化等について体験的に理解を深めることにもなる。
この「主体性」やその源泉となる積極性を育むには、児童の興味・関心事が何かを重視する必要がある。このことは、コミュニケーション活動のトピックを選ぶ際の第一条件とすべきである。次に、国際的なP-P-Cにおけるコミュニケーション力を育むためには「コミュニケーションの働き(機能)」を重視すべきである。文科省は、一九八九年の中学校学習指導要領「外国語」の改訂時以来、この教育理念を導入している。したがって、小学校の外国語活動でも、この「コミュニケーションの働き」はカリキュラムの開発と指導の在り方において重視されている。具体例としては、「気持ちを伝える」「考えや意図を伝える」「相手との関係を円滑にする」「相手の行動を促す」などが掲げられている。
例えば、「将来の夢」におけるコミュニケーションを考えてみよう。
A: What do you want to be? (何になりたい?)
B: Soccer player.
A: Why?
B: (Because) I like soccer.
A: Great! B: Thank you.
まず、AはBに対して質問することで相手の行動を促している。次に、AもBも談話の能力とソーシャルスキル(資質・能力)を用いて、自己の思いや人を思いやる心を明瞭に伝え合っている。具体的には、Bは自分の考え(将来の夢)を決定し伝える。AはBにその理由を尋ねた後、Bの返答をほめる。それに対して、Bは感謝の気持ちを伝える。相手のとの関係(ソーシャルスキル[人間関係構築力])が円滑に行われている。いずれも国際的なP-P-Cには不可欠な資質・能力の素地である。したがって、このような観点から指導と評価の在り方を行うことが大切である。
指導と評価 vol.55 2009年10月号(通巻658号)
(社)日本図書文化協会 日本教育評価研究会発行
小学校英語活動のポイント 第6回
カテゴリー:寛治先生走る|2011年11月 7日 10:12
コミュニケーション力(資質・能力)の育み方と見取り方のポイント(その1)
小学校外国語活動の最終的な目標は、中学校外国語科の目標や内容と連帯を図った、コミュニケーション能力の素地を養うことである。その教育内容は、(1)外国語を用いて積極的にコミュニケーションを図ることができるように指導すること」と(2)「日本と外国の言語や文化について、体験的に理解を深めることができるように指導すること」の二点である。そして、主体性の育みにつながる積極的な態度(資質)の育成に重点を置いた(『小学校学習指導要領解説 外国語活動編』六頁参照)。そこで本稿では、国際コミュニケーションの場では不可欠な「積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度」を育むには、何をどうすればよいか、また、その資質の見取り方について考察する。
オーラル・コミュニケーションにおける積極的な態度を育むにはさまざまな方法が考えられる。次に述べる手だては、そのうち最も基本的な方法の一つといえよう。目に見えにくい学力といわれる関心・意欲(積極性)を育むには、まず、児童の心的発達を考慮する必要がある。つまり、児童の「したいこと」「言いたいこと」は何かを重視すべきである。例えば、高学年の活動においてフルーツ・バスケットやジャズ・チャンツのように主に右脳の働きを利用する英語活動を四〇分間続けることはむずかしい。高学年は論理的思考を司る左脳の働きが活発になり、そのような単純な活動には興味を示さなくなるからである。
次に、コミュニケーションの場面とコミュニケーションの働き(機能)を重視した活動を考える必要がある。真のコミュニケーション力(資質・能力)は、実際的なコミュニケーションの場における体験活動を通して育まれるからである。したがって、まず『小学校学習指導要領 第4章 外国語活動』や『英語ノート』にも紹介されているように、高学年の児童にとって身近なトピック(例えば、買い物、将来の夢など)を選定すべきである。次に、活動を通して育みたいコミュニケーション能力を決定する。その際、コミュニケーションが豊かに行われるコミュニケーションの働きを取り上げることが重要である。
ここで、前号で掲載したコミュニケーション能力の表(Canale:1983)を用いて育みたい能力を認識しよう。例えば、買い物で、自分のほしいものを店の人に伝える談話の能力(考えや意図を伝える働き)、すなわち、自分で買いたいものを決定し、行動する力(国際教育で求める資質・能力)を育むとしよう。積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度は、このようなコミュニケーション能力がベースにあるから育まれる。したがって、コミュニケーション能力のパフォーマンス状況も一緒に見取る必要がある。
具体例をあげて説明しよう。活動のトピックは、「Let's Go Shopping!」。果物屋での買い物活動で、3/3回目とする。活動のクライマックスで、次のようなオーラル・コミュニケーションが交わされるとしよう。
A(店員): Hello!
B(客): Hello!
A: May I help you?
B: Yes. アップル.
A: Pardon?
B: アップル, please.
A: Apple?
B: Yes, apple.
A: How many?
B: スリー.
A: Three apples?
B: Yes, three.
A: Anything else?
B: Watermelon, please.
A: How many?
B: Two, please.
A: OK.(以下、省略)
このようなコミュニケーション活動の場合、評価規準はねらいとの関連から「果物屋で、自分の買いたいものを決め、店員に進んで伝え(ようとし)ている」が考えられる【(自己決定能力をベースとする)積極性の見取り】。具体的には、客が自分の書いたいものを決定し、店員に一生懸命伝えようとしているパフォーマンス状況を見取る。AとBの「確認のやりとり(繰り返し)」は、英語特有のコミュニケーションの豊かさと持続性(方略的能力)を育むことになる。
指導と評価 vol.55 2009年9月号(通巻657号)
(社)日本図書文化協会 日本教育評価研究会発行