主体的に学べる子に育てる 子どもの気持ちに
寄り添うしつけ

親が子どもに寄り添い共感する姿勢で、
子どもはその良さを伸ばしていけるのです。
長年、教育の現場で多くの子どもたちとふれあい、
数々の調査研究を行ってきた
内田伸子先生に教えていただきました。

内田 伸子 先生

お話をお聞きしたのは

内田 伸子 先生

十文字学園理事・十文字学園女子大学特任教授、筑波大学客員教授、お茶の水女子大学名誉教授、学術博士。発達心理学、認知心理学、保育学を専門とする。著書に『子育てに「もう遅い」はありません』( 冨山房インターナショナル)など多数。ドラキッズ教育アドバイザー。

子どもの学びにおいて、何よりも大切なこと、それは“主体性をもたせる”ことです。みなさん、自分のお子さんには積極的に生き生きと、たくさんのことにチャレンジしてほしいと考えていらっしゃるでしょう?

そんな人間に育つために大切なのが、“playfullearning”の姿勢、日本語に訳せば、“楽習(がくしゅう)”です。 楽しく、たくさんの経験をする、それが、子どもの成長にはとても重要なのです。

「やってみたい!」をできるだけ

“楽習”のコツはいたって簡単です。子どもたちが、「やってみたい!」と思うようなことをできるだけたくさんさせてあげれば良いのです。子どもたちがやりたいこと、大好きなことといえば……そう、めいっぱい遊ぶこと。楽しく遊んでいる中であれば、知らないことに向き合っても、物怖じせずに「何だろう? やってみよう!」という意欲をもてるようになります。知らないことは、こわいことではなく、何かを知るきっかけとなる、とても楽しいことだと経験すること。それは、大きくなってから頭で覚えるにはすでに難しく、小さいうちに、体で、経験で実感しなければ身につかないことなのです。

この、主体的に学ぶ力の土台を作る幼児期に、子どもと一番かかわるおうちの方にぜひ取り組んでほしいことがあります。それは、しつけを“共有型”にするということ。これは、親子のふれあいを大切にし、子どもに寄り添うしつけです。

子どもの気持ちに耳を傾け、
共感する姿勢

例えば、絵本の読み聞かせであれば、読んだ後にあれこれ問いただすのではなく、子どもから出てくる言葉をじっくり待ってみてください。そして、出てきた言葉を否定せず、認めてあげてください。遊ぶときも「遊ばなきゃ」と身構える必要はありません。子どもがやっていることに合わせてあげるだけで良いのです。

親は子どもを導こうと、つい先回りしてあれこれ指示を出しがちです。でも、子どもの主体性や能力を伸ばすために大切なのは、子どもそれぞれの個性や感受性を見守り、選択肢を与えて彼ら自身に選ばせることです。子どもが自ら選んだ遊びの中で、楽しい経験をたくさんする。楽しいからこそ印象に残り、将来まで役に立つ主体性が身につく。“楽習”は、親子が一緒に過ごせる今の時期だからこそできる、親と子の習慣なのです。

illustration /  KUNIBU,Chiemi